進化する技術を、創造力の武器に。ゲームクリエイター金子一馬による『ツクヨミ』への向き合い方
.png%3Fw%3D800&w=3840&q=90)
目次
※(こちらは2026年4月17日Cocoda掲載の弊社紹介記事を、一部修正し転載したものです)
これまで『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズで、コンセプト設計や世界観づくり、キャラクターデザインを牽引してきたゲームクリエイター・金子一馬氏。その後も多数のゲーム制作に関わり、2023年にコロプラへ入社しました。

彼が入社後からコンセプトプランナーとして開発に携わってきた新たなゲーム、『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』が、2026年4月23日にNintendo Switch用ソフトとして発売されます。
約40年にわたってゲームをつくってきた中で、本作は金子氏にとって集大成の一つとも言えるタイトルです。
さらに今回は、コロプラの技術力を活かし、AIを活用した新しいプレイ体験にも挑戦しました。金子氏自身の世界観や画風を学習した独自のAIシステム「AIカネコ」により生成されたイラストの実装など、これまでにない試みも盛り込まれています。
一人のゲームクリエイターとして、金子氏がこのツクヨミというゲームにどう向き合ってきたのか。本記事ではその過程をまとめてみたいと思います。誰にとってもそのまま当てはまる内容ではないかもしれませんが、ものづくりに携わる方にとって、参考になる点が少しでもあれば嬉しいです。
人の記憶に残り続ける、他にない世界観をつくる
金子氏がゲームづくりにおいて一貫して追い求めてきたのは、他にはない独自の世界観を描くことです。
「ただ新しいだけでも、奇抜なだけでもなく、人の記憶に長く残り続けるようなものを生み出したいと考えてきました。」と語ります。

金子氏がゲームづくりに携わり始めてから、約40年。『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズなど、さまざまな作品で世界観や物語の設計に携わり続けてきました。
昔から神話や都市伝説、オカルトといったものが大好きで、他にも映画や音楽、ファッション、サブカルチャーなど、さまざまなものから影響を受けてきたそうです。
その中で、「誰も手をつけていないような、他にない独自の世界観を描きたい」という思いを強く持ちながら活動を続けてきました。
金子氏は「ありがたいことに、私の描く世界観が好きだと思ってくださる方も増え、長く作品を楽しんでいただけるようになりました。」とこれまでの活動を振り返ります。
数多くの神魔のキャラクターデザインを手がけてきたことから、「悪魔絵師」と呼ばれるようになりましたが、今回の『ツクヨミ』では新しく「神魔画家」と名乗るようになりました。
ゲームづくりを取り巻く技術や市場、トレンドは常に変化してきましたが、金子氏の軸はずっと変わらず、「人の記憶に残り続ける、他にない世界観」をつくることにあります。
プレイヤーから“選ばれる理由”としての世界観
このようなこだわりを持ってゲームづくりに携わる以上、自身が描く世界観や物語そのものが、プレイヤーから選ばれる理由になることを金子氏は目指し続けてきました。
ゲームの魅力はさまざまな要素の組み合わせで成り立っています。ゲームシステムの面白さや操作感、駆け引き、バトルの爽快感など、それぞれが重要な役割を持っています。
その中で、自身が最も貢献できるのは、「重厚な世界観や物語を構築すること」だと金子氏は自負しています。「ただ単にゲームシステムに後付けで装飾するのではなく、『この世界で遊びたい』『もっと深く入り込みたい』と思わせるような世界観を幹として据えること。これは、商業としてゲームづくりを成立させるうえでの私の責任でもある」と捉えています。

現代を舞台にした他にない世界観、特に古今東西の神話や都市伝説に登場する悪魔や神々が跋扈する世界をベースに、物語を展開していくことを得意とする金子氏。
「作品の楽しみ方は人それぞれで良いと思っています。シンプルに『なんか良いな』『引き込まれるな』と感じてもらうのも一つですし、自分なりに考察して楽しんでもらうのも良い。たとえば映画や文学作品を観たあとに、『あの意図はこうなんじゃないか』『あの表現は〇〇のオマージュじゃないか』と語り合う時間は、とても楽しいものではないか」と金子氏は語ります。
金子氏自身も多くの作品に触れてきましたが、良い作品ほど何十年も語り継がれ、今なおファンの間で考察され続けています。
世界観を作り込むということは、ゲームをプレイしている時間だけでなく、その後に世界観を考察したり、誰かと語り合ったりするような、別の楽しみ方を生み出すことでもあるのでしょう。

深く、長く楽しんでもらえる世界観にするために、金子氏自身も膨大な知識を取り入れたり、キャラクターの行動原理を何度も掘り下げながらストーリーに落とし込んでいきます。
そうした体験まで含めて設計することが、金子氏にとっての「世界観づくり」なのです。
「ツクヨミ」における世界観の軸
こうした考え方は、ツクヨミの世界観づくりにおいても同様です。
本作では、現代日本を舞台にしながら、日本神話にとどまらず、世界中のさまざまなオカルト要素と接続する世界観を描いています。
金子氏がゲームを考えるうえで、まず最初に設定するのは「どんな問題を解決する物語にするか」です。世界の滅亡を食い止めるのか、奪われたものを取り返すのか、規模の大小はあれど、物語を動かすための命題を定める必要があります。
ツクヨミにおいて設定したのは、施設へ「潜入」し、施設内で行われようとしている「儀式を阻止する」ことです。ローグライクというゲームシステムとの相性も踏まえながら、ゲーム上の目的として“儀式の阻止”を据えました。
そこから着想を広げていく中で、たまたま金子氏が散歩中に目にしたタワーマンションの存在がきっかけとなり、本作の舞台である「THE HASHIRA」の設定へと発展していきました。

20XX年、東京。湾岸エリアにそびえ立つ、超高層複合施設「THE HASHIRA」。 洗練を極めた意匠と先進技術の融合が、その地に住む者たちに比類なき充足感をもたらしていた。 だが、その輝きは一夜にして暗転する。 突如として発生したプラズマの結界がビル全体を包み込み、外界を完全に遮断。 逃げ場を失いパニックに陥った人々を、空間の裂け目から現れた異形の存在「神魔」が蹂躙していった。 未曾有の事態の中、超国家的組織「維持正常化機構」に所属するエージェント「十六夜月のツクヨミ」は人外の巣窟と化した摩天楼へ潜入する。 塔の頂で待つのは、世界の調和か、それとも古の神による破滅か ―――――。 |
物語の舞台が定まった後は、その舞台における主人公の目的や行動原理、あるいは敵対する組織の目的や歴史などを掘り下げながら、キャラクターデザインへと落とし込んでいきます。
例えば、本作の主人公となる「維持正常化機構」に所属するエージェント「ツクヨミ」は、日本神話に登場する月の神をモチーフとしています。
月は満ち欠けによって姿を変えることになぞらえ、「十六夜月・新月・満月・半月」という4人のツクヨミが登場します。彼らは「THE HASHIRA」における事態の解決という共通の目的を持ちながらも、それぞれ異なる物語を辿ります。
そのため、プレイしていく中で断片的な情報が少しずつつながり、最終的に金子氏が当初構想していた「1本の長編群像劇」としての重厚な物語が浮かび上がる設計となっています。

さらに、世界観をより重厚かつ魅力的にする要素として、異形の存在である「神魔」が登場します。
神魔のデザインでは、日本神話や世界各国の伝承をモチーフにしつつ、「実はこういう解釈もあるのではないか」といった裏側の設定や関係性を織り込みながら構築しています。
「独自性のあるデザインを目指しながらも、『もしかしてここは…』とプレイヤーが自分なりに意味を見出せるような“取っ掛かり”をつくることを意識しています。もちろん、純粋に見た目として『良い』と感じてもらえることも大切にしています。」

ツクヨミを実際にプレイしていただくことで、より深く世界観を楽しんでいただけると思いますが、このように舞台設定から登場人物の設定、キャラクターデザインに至るまでを一貫して掘り下げ、世界観全体をつくりあげていくことが金子氏の大きな役割でした。
生成AIという新技術を駆使した挑戦
また、先行して展開されたアプリゲーム『神魔狩りのツクヨミ』の大きな特徴の一つとして、生成AIという新技術を駆使し、これまでにない新しいプレイ体験を提供する点がありました。その中核となる機能の一つが、金子氏の画風を学習したAI(AIカネコ)がオリジナルのカードイラストを生成し、リアルタイムでプレイヤー個別のカードを「創成」する仕組みです。
ゲームを取り巻く技術は日々進化していますが、生成AIの発展は特に大きな出来事であり、現在でもさまざまな議論が交わされています。
そうした中でも、金子氏自身は新しい技術を取り入れることを前向きに捉えていました。「ゲームの世界観に新たな奥行きをもたらし、プレイヤーの皆さんにより楽しんでいただくための強力なツールになり得る」と考えたからです。

AIカネコの開発にあたっては、金子氏が入社されて以降、本作のために描き下ろしたイラストをデータセットとして用い、開発チームとともに何度もチューニングを重ねながら精度を高めていきました。
一方で、金子氏の描く世界観を楽しみにしてくださっている方にとっては、AIが生成したイラストが混ざることに、少なからず違和感を覚える可能性もあると感じていました。
そこで本作では、作中に登場する偽の神「オオカミ」というキャラクターに扮するAIカネコが無数に生み出すカードはすべて「偽物(まがいもの)」であると定義し、金子氏自身をモデルにしたキャラクター「画家K」が描いたイラストのみを「本物」と位置づけています。
生成AIによる創作を、作品世界の中で意味を持つエンターテインメントとして成立させるために、メタフィクション的な構造を採用しています。

ゲームに生成AIを組み込むことは、コロプラにとっても新たな挑戦でした。しかし、こうした設計によって、AIとの共創によるゲーム体験の一つの形をつくることができたのではないかと金子氏は考えています。
プレイヤーと共に楽しみ、創りあげる
『神魔狩りのツクヨミ』におけるコロプラと金子氏の目的は、新たな技術を活かしたゲームシステムへの挑戦に加えて、プレイヤーの皆さんと一緒にゲームや世界観を創り上げていくような体験を創ることでした。
その一つの形が、プレイヤー参加型イベント「盈月奉納ノ儀(えいげつほうのうのぎ)」です。

これは、プレイヤーがゲーム内で生成したカードイラストの中から、アート性・デザイン性に優れたものに投票し、金子氏自身がその中から1枚を選び、リファインして公式カードとして実装する試みです。プレイヤーと金子氏、そしてAIとの共創によって、実際のゲーム体験が拡張されていく仕組みでもあります。
「盈月奉納ノ儀」には数多くのプレイヤーが参加し、最優秀賞を決める配信イベントにも多くの視聴者が集まりました。そして、このイベントを通じて新たな公式カードも追加されています。

本イベントについて振り返る金子氏は、「これまで、クリエイターが作ったゲームをプレイヤーに届けるという一方向のコミュニケーションが一般的でしたが、AIやカード生成の仕組み、そしてこのイベントを通じて、双方向のコミュニケーションへと進化させることができました。
まるで世界中のプレイヤーとつながれたような感覚がありましたし、プレイヤーとの共創によってゲーム自体が拡張していく過程には、これまでにない面白さがありました。」と語ります。
集大成としての完全最新作
せっかく世界中のプレイヤーがゲームを楽しみ、数多くのカードを生み出してくれたのですから、これらを活かすことはできないか。そしてさらに多くの方々に遊びやすい形で届けられないか。
そう考えて開発を進めたのが、『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』です。
本作は『神魔狩りのツクヨミ』と世界観を同じくしているが、あらゆる要素を一新した完全最新作。しかし、これまでの金子氏の活動やプレイヤーとの交流の軌跡も感じられる集大成となっています。

https://tsukuyomi-game.com/jp/
開発にあたっては、『神魔狩りのツクヨミ』でプレイヤーが生み出した数多くのカードイラストの中から、3600枚を選定して実装しました。さらに金子氏自身も、新たにコンセプトアートやキャラクター、神魔を描き下ろしたり、デザインを監修しています。そうして世界観を共有した上で、一から作り上げています。

進化する技術を、創造力の武器に
金子氏が長年、ゲームづくりやデザインに向き合う中で、技術も大きく進化してきました。
かつて絵は紙とペンで描くものでしたが、今ではデジタルで描くことが当たり前になっています。そして現在は、生成AIという技術も生まれました。
「こうした変化に不安を感じる人もいるかもしれません。しかし、必要以上に恐れることはないと思っています。クリエイターにとって本当に大事なのは、どんな技術を使うか以上に、何に突き動かされてものづくりをするのかという、もっと根源的な部分だからです。それは別に、崇高な志である必要はありません。」
金子氏は、昔から神話や都市伝説が大好きでした。物語を知ることも、考察することも、自分なりに世界を想像したり、絵を描くことも好きでした。それがいつしか自分の得意なことになり、さまざまなゲームづくりに携わるようになって、金子氏の描く世界観が好きだと言う人も現れました。
「私はやはり、他にはない独自の世界観をつくることが好きですし、それを色んな人と共有して、一緒に遊ぶことが好きなのだと思います。そしてそれが、何年経っても誰かの記憶に残り、文化として根付いていくものとなるのであれば、これ以上に嬉しいことはありません。
それができるのであれば、使うツールは何であっても構いません。むしろ、プレイヤーがもっと楽しめるのであれば、新しい技術にどんどん挑戦した方がいいとも思っています。」と語ります。
共に働くコロプラ社員にとっても、金子氏の進化、そして彼が切り拓く新たなゲーム体験から日々大きな刺激を受けています。これからも、世の中にもっとおもしろいゲームやコンテンツが生まれていくことを楽しみにしつつ、プレイヤーの皆さんと金子一馬氏の想像力が、新たな技術を通じてつながることで完成した『ツクヨミ』の世界を、是非多くの方に体験していただければ幸いです。
